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17 のユネスコ世界文化遺産があり、公家文化と禅庭が綾なす雅な古都。

 

そんな常識で彩られた京都ですが、別の一面もあります。

朝はパンと珈琲を嗜み、自転車で軽やかに市内を走る。

「四条通は広なったけど、バスが混んでかなんわ~」

「今度、麩屋町に新しい店できるみたいやで。行ってみいひん?」

などと、土壁と焼杉の町家に暮らす京都の人々の日常は、意外にも色彩に溢れています。

 

『京都 日常花 市井のいけばな十二カ月』は、自転車で回れる距離感に収まる素敵な店の窓 を覗く、暮らすような気分に浸れる花の本です。

私も通う花屋さん、大好きな器屋さん、美味しい串カツ屋さん、気持ちを鎮めたい時に足を 運ぶお寺、そして、いつか行ってみたい憧れのお店・・・。

ページをめくる毎に、知らなかったお店をチェックし、スケジュール帖に尋ねる日を書き入 れる。

そんな、ちょっと先の未来の楽しみを与えてくれる本でもあります。

 

これ程に京都が豊かな文化を形成しているのは、人々が「花」を忘れないからではないでし ょうか。

祇園祭には、祇園守の木槿と檜扇を。

名残りの茶事には椿を。

新春の年神迎えには雌雄の松を。

京都の人々にとって、「花」は二十四節気と共に、季節の訪れを告げてくれるものです。

 

「あの人には、花があるなぁ」 と、そう呼ばれる人は、心に「花」が在る人です。

日々を過ごす空間に、毎朝一輪の花を活ける。

季節の掛軸を整え、暦に添って花器を替え、場を清める。 その時間を日々生活の中に落とし込んでいくことこそ、自ずから浮かび上がる「花」となる のだと感じます。

 

さるほどに、人の心に思ひも寄らぬ感を催す手だて、これ花なり。

 

「一見さん、お断り」などと悪しき習慣のように語られる京文化ですが、その奥に京都で暮 らす人々の、客迎えへの心意気を見る思いです。

 

「いつか自分も、こんな衒いのない花を、すっと活けられるような人になりたい。」

そう、繰り返しページをめくるのです。

 

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『京都 日常花 市井のいけばな十二カ月』

企画・編集 渡邊航

写真 野口さとこ

発行 株式会社 青幻舎

書籍 | 『京都 日常花』市井のいけばな十二カ月 vol.1

¥2,500価格
  • 送料税込550円

    一万円以上お求めの場合送料無料

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