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2019年、植物染古法との出会いがありました。

その豊かな色彩と、「色の影」と呼ばれる植物染ならではの、たゆたう色合いに魅了され、ライフワークとして植物染を追求し、染織の奥の道を歩みたいと心に決めました。

 

「きものとは何か」という視点で着物のルーツを辿る旅をし、花を育て、花に倣いながら植物染友禅古法を研究するプロジェクト【 採花譜 】の活動を、私のライフワークとしてスタートしました。

この書籍は、その活動の一環として、毎年テーマを変えて発刊していくものです。

 

 

着物は、「木霊(こだま)の宿る薬草で色を染め、身を護る」ことが本来の役割だと云われます。

 

藍は抗菌作用。

茜は浄血作用。

黄蘗はお腹を守る薬として。

紫根は怪我や火傷、皮膚炎に薬効があります。

 

着物は、まさに「着る薬」だったのです。

 

 

コロナ禍の2年を過ごし、着物は不要不急のものとなりました。

本来色と布を通して肌を護り、人の精神を護るものだった着物は、肌と最も遠い存在となりました。

それでも着物への想いは失われず、着物をまとう度包み込まれる安心感に、益々着物の不思議な力を感じたものです。

 

私たちにとって、着物というものが、どこから来て、何を意味するものなのか。

 

着物のルーツをもう一度問い直したくて、日本の染織の夜明けの場所、天孫降臨の地・高千穂を旅しました。

高千穂には、我が国の水が未だ純でなかった時に、高天原から水の種を植えたと伝わる井戸があります。

水を追って歩を進め、伝承をお聞きするうちに、かつての日本人がどれほど水に生かされ、水と共に暮らしてきたか、しみじみとその希求心を感じる旅となりました。

 

今期、種から育てた藍を高千穂の「天真名井」の水で染め、作品を創りました。

神気を感じる透明感のある染め色に、原始の色に思いを馳せています。

 

 

また、染織の歴史を追い、弥生時代に北部九州で始まったとされる養蚕の起源を辿る為、吉野ヶ里遺跡を尋ねました。

吉野ヶ里遺跡では、出土した2400年前に日本茜と貝紫で染色された、絹と大麻の貴重な残欠を撮影させて頂きました。

小さな欠片から、人々が染めに込めた祈りを感じる旅となりました。

 

 

こうして染の伝承地を旅するうち、この国の染織がどんなに豊かで、その土地に根差した風土と植生から発生したものであるのか、花と暮らし風土に生かされて育まれてきたものであるのかを、心に沁みて感じるようになりました。

「着物とはまさに民俗学である」

そう思い至り、この素晴らしい文化を写真と文章で残していこうと思い立ちました。

「採花譜プロジェクト」では、染織のルーツを辿る旅の記録を毎年少しずつまとめ、本の形で冬至と夏至に発刊していきます。

 

 

2021年冬至に発刊する本書は、「水と素 みずとしろ -始まりの地へ―」と題し、着物のルーツが神にささげる「神御衣」であること。

穢れなき色は、大和の原始の色のうち、太陽を表す「光の色」だということ。

太陽の光により植物が育ち、葉を蚕が食し、水の恵みにより布に染織を施すことができること。

 

万物の源である「水」と、始まりの色「素(しろ)」をテーマにお届けします。

 

 

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ISBN978-4-9912638-0-4

C0072 ¥3800E

 

著:野原 佳代

寄稿、編集:渡邊 航

写真:須藤 和也

装釘:浅野 豪

印刷:有限会社 修美社

書籍 | 採花譜『水と素(しろ) - 始まりの地へ -』2021年冬至

¥3,800価格
  • 配送手数料税込550円

    一万円以上お求めの場合送料無料

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