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伝統色のパーソナルカラー


日本で一番最初にパーソナルカラー診断に基いて服選びをした人は誰でしょう?

それは、「源氏物語」の主人公、光源氏です。

「歳末の衣配り」として有名な、「 第二十二帖 玉鬘 」の巻で、身分によって着物の色が決まっていた時代に「 げに、似ついたる見むの御心なりけり。 」、つまり、「似合う」ことを服選びの基準にしました。

それでは、日本で一番最初に染匠としての力を発揮した人は誰でしょうか?

それは、光源氏の最愛の夫人、「紫の上」です。

染匠とは、今でいう総合プロデューサーのことで、実際に手を動かして友禅や刺繍をする訳ではありませんが、着物創りの指揮者にあたります。

蓮佳の仕事も同様です。

紫の上は「 かかる筋はた、いとすぐれて、世になき色あひ、匂ひを染めつけたまへば、 ありがたしと思ひきこえたまふ。(染織の才能があり、何とも言えない素敵な色合いや、艶のある色柄を染め出す。) 」と源氏に高い評価をされています。

また、源氏に「 着たまはむ人の御容貌に思ひよそへつつたてまつれたまへかし。着たる物のさまに似ぬは、ひがひがしくもありかし。(お召しになる方のご容貌、ご年齢、お立場に寄り添ったものをお見立てして差し上げてください。着る物が似合わないのは、勿体ないことですので。) 」とアドバイスをします。

「着物で着る人の魅力を引き出したい。」 「決して華美でなく、出ず入らず、その人の品を引き立ててくれるような、纏う人にそっと寄り添ってくれるような着物を創りたい。」 「一つの着物の中に間があり、風が流れ、物語がある。着ることによって完成する。普段と違う自分に、少し自信が持てる。着る人をそっと応援できるような着物を創りたい。」

蓮佳がずっとやりたいと思っていたことが、1000年前に書かれた小説に既に表現されていることに大変感銘を受けています。

子供の頃に源氏物語を読んだ時からこの「衣配り」は心にひっかかる印象深い段でしたが、今私が光源氏と紫の上の役割の両方を出来る技術を得られたのも何かの巡りあわせでしょうか。

蓮佳として独立する以前、10年の呉服店勤務で数多くの女性にお似合いになる着物をお見立てさせて頂いて参りましたが、この春にパーソナルカラー診断士の資格を得、経験と知識が一つのラインで繋がりました。

洋服と違い、色と色、柄と柄の組み合わせが大変複雑な着物は、常着で無くなった今だからこそ「洋服は似合う色柄が分かるけど、着物は自信が持てない」という着物迷宮入りをされる方を続出させています。

特に全体の80%を占める着物の地色選びと、3%を占める帯締めの色が大事です。

お一人お一人時間をかけて、お似合いになる色、お映りになる色を診断できればいいのですが、京都・紫野のアトリエまでご足労願うのは物理的に難しい方もいらっしゃいます。

そんな方に向けて、今後は「伝統色のパーソナルカラー」として、十人十色のシーズンカラーを四季毎に大まかに分け、制作を行っていくことに致しました。

勿論単純に4つに分類できるほど簡単なことではないのですが、一つの基準として皆様の着物選びのご参考になりましたら幸いです。

さて、元旦の祝い着として女性達に贈られる衣配りを見ていきましょう。

◆ 夏:花散里

「 浅縹の 海賦の織物、織りざまなまめきたれど、匂ひやかならぬに、いと濃き掻練具して、夏の御方に。(淡い縹色で、海藻を織り出した凝った織物の、ニュアンスカラーの優美な衣。 ) 」

花散里の穏やかで優しいご気性がしのばれます。

シーズンカラーがサマーの方は、初夏の紫陽花のようなエレガントな着こなしがお似合いです。色柄はあまり主張するものでなく、落ち着いたニュアンスカラーが映えます。

◆ 春:玉鬘

「 曇りなく赤きに、山吹の花の細長 。(濁りの無い色に山吹色の華やかで美しい色合わせ。 )」

母夕顔よりも優れたご器量で、多くの公達に求婚を受けたまばゆいばかりの玉鬘の美しさを表す装いです。

明るく派手な頭中将のお血筋、と紫の上の衣から読み解く人物像の通り、シーズンカラーがスプリングの方は春のお花畑のような陽気なビビットカラーがお似合いです。

特にスプリングでもビビットカラー、ブライトカラー、ストロングカラーが映える目鼻立ちの華やかな方のようですね。

◆ 冬:明石の御方 「 梅の折枝、 蝶、鳥、飛びちがひ、唐めいたる白き小袿に、濃きがつややかなる重ねて、明石の御方に。 (白に紫という高貴な取り合わせ。唐めいた柄をも着こなせる魅力を持った方。 )」

その高貴でモダン、誰が着ても似合うものではない衣配りに、紫の上の心中穏やかでなくなる程の思いを抱かせるのは、明石の御方のシーズンカラー、ウインターの個性です。

シーズンカラーがウインターの方は、黒、漂白したような白を利かせたモノトーンの装いや、メリハリの利いた個性的な装いも難なく着こなせます。

その秘密は生まれ持った瞳や髪の、コントラストが強いこと。

暗色も着こなせますが、透明感のあるパステルカラーもお似合いになります。

◆ 秋:秋好中宮

歳末の衣配りには入っていませんが、 「 第十九帖 薄雲 」で春と秋のどちらを好きか問われ、「秋の夕べが六条御息所のはかなく亡くなった露の縁につけて自然と好ましく感じられます。」と答えたことから秋好中宮と呼ばれるようになった六条御息所の娘、斎宮の女御。

「 第 二十四帖 胡蝶 」では紫の上と春秋の優劣を競う、 高貴な出自と母譲りの豊かな教養、そして筋の通った女性のようです。

オータムのシーズンカラーを持つ方は、深みのある秋の紅葉、豊穣の実りを思わせる上品でリッチな配色が似合われます。

ディープトーン、ダルトーン が似合うオータムカラーの方は、金色を取り入れたゴージャスな装いもお得意です。

オータムの中でもソフトトーンの似合う方は、アースカラー等のニュアンスカラーが映えます。

4つのシーズンの中で、最も着物に使われてきた伝統色がお似合いになるのがオータムの方です。

色の持つ力は不思議なもので、その人の内面を映す色でもあるようです。

着物の取り合わせで「よく映る。」という色は、きっとあなたの魅力を引き出してくれる色となることでしょう。

是非「似ついたる」衣選びをなさって、着物生活を楽しんで頂ければと思います。

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