紫紘創業者・山口伊太郎氏は、70歳から源氏物語絵巻を西陣織で表現するという偉業をスタートされました。
70歳というのは、普通の人でしたら人生の残り時間に思いを馳せる年代です。
そこから37年の歳月を経て、途中に技術的な組織の発展研究や、納得のいく材料の開発を挟みつつ、途方もない時間をかけて、見事絵巻は完成しました。
青苔春風文と題された本作は、伊太郎氏の人生の集大成ともいえる源氏物語絵巻の見返しに織られた意匠です。
墨の濃淡、淡彩で描かれた心象風景のような桜は、「薄雲」で描かれた光源氏最愛の藤壺の宮がお隠れになるシーンでしょうか。
「深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染に咲け」とは古今集の古歌ですが、弔いの色である鈍色の衣に身を包んだ光源氏の引き裂かれんばかりの悲哀と慟哭が伝わってきます。
その物語の下敷きがなくとも、どうして桜というものは、私たち日本人の心を揺さぶるのでしょうか。
伊太郎氏が源氏物語絵巻を織るうえで開発されたという、引箔に色糸でぼかしの地組織を通す表現も相俟って、花筏となって流れゆく花弁に、無常と一瞬の美の煌めきを感じるのです。
ただただ、物言う事も忘れて魅入っていたい…。
伊太郎氏に、こんなに美しいものを世に送り出してくれて、残してくれてありがとうございますと、感謝を申し上げたく思います。
西陣織の名門、「紫紘」。
源氏物語絵巻を西陣織で表現するという途方も無い仕事をライフワークとされ、素晴らしい帯の数々を残された故・山口伊太郎氏が創設した言わずと知れた名門の織匠。
西陣織の芸術性、創造性を極限まで高めた人物として、西陣ではその名を知らぬ人はおりません。
紫紘さんの帯のファンの方もたくさんいらっしゃる事でしょう。
伊太郎氏が突き詰めた表現を、確実に、着実に受け継ぎながら、日々現代の意匠を取り入れ新しい創作を続ける紫紘さんの帯。
「あぁ、ええ仕事っていうんはこういう事なんや。」と腑に落ちる、引き算の図案と選び抜かれた糸の配色。
それを身に纏う喜びを是非感じて頂きたいと思います。
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【 ご着用シーン 】
パーティー、茶会、入学卒業式等に。
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【 伝統色のパーソナルカラー、夏、花散里 】
サマー、ウインターのブルーベースの方にお勧めです。
※価格はお問い合わせください。
袋帯 | 紫紘 青苔春風文
- 素材 正絹
- 幅 8寸2分仕上がり基準
- 季節 袷
- TPO 礼装に